【法人向け】卒FIT後はどうする?余剰電力の活用には自家消費が最適
自社の敷地内に太陽光発電の導入を検討している企業にとって、「卒FIT」は重要な問題です。
一般住宅ではすでに卒FITを迎えた家庭もありますが、「産業用太陽光発電の場合はどのような流れになるのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、産業用太陽光発電の卒FITの概要やその後の影響、卒FIT後の余剰電力の活用方法などを解説します。ぜひ、導入検討の際にお役立てください。
また、そもそもの太陽光発電の仕組みや費用等について知りたい方は、下記記事も参考にしてみてはいかがでしょうか。
・【図解とイラスト付き】太陽光発電の仕組みや役割は?設置の種類も解説
・【仕組みから理解】自家消費型太陽光発電のメリットと効果的な活用法
・法人(企業)向けに解説/太陽光発電のメリット・デメリットは?
太陽光発電における卒FITとは何か
卒FITとは、FIT制度(固定価格買取制度)の適用期間が終了することを指す用語です。
産業用太陽光発電にて適用が開始されたのは2012年で、適用期間は20年ですので、2032年から順次卒FITを迎える企業が出てきます。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 買取価格・期間等(2012年度~2023年度)
そもそもFIT制度とは?
そもそもFIT制度とは、2009年にスタートした再生可能エネルギーの余剰電力買取制度です。
固定価格買取制度を意味する「Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)」を略しています。
FIT制度は、まずは家庭用で多く見られる10kW未満の太陽光発電を対象に、10年の対象期間で実施され始めました。つまり、家庭用太陽光発電では、すでに2019年から順次卒FITを迎えています。
この制度の目的は、再生可能エネルギーの普及です。
なぜ政府が主導してまで普及することになったのかというと、その背景には、日本のエネルギー自給率の低さが挙げられます。
日本のエネルギー自給率をほかのOECD(経済協力開発機構)諸国と比較した結果、2021年度の自給率は13.3%で、38か国中37位でした。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)
エネルギー源の調達を海外に頼りすぎていると、国際情勢によりエネルギーの供給が不安定になった際に経済的な損失につながる恐れもあります。そのため、エネルギーの自給自足を目指し、再生エネルギー普及のためのさまざまな策が講じられているのです。
卒FITの影響
では、卒FITを迎えるとどうなるのでしょうか。大きく変化するのは、余剰電力の買取価格です。
FIT制度の買取にかかる費用には、 再生可能エネルギー発電促進賦課金が充てられています。再生可能エネルギー発電促進賦課金は、電気使用者の毎月の電気代と併せて請求されています。
卒FIT後の買取には、この再生可能エネルギー発電促進賦課金が充てられなくなります。
良い影響
後ほど詳しく紹介しますが、卒FITを迎えたあとにも太陽光発電の余剰電力を有効活用する方法はいくつかあります。そのため、卒FITは自社のエネルギー活用を見直す良いタイミングにもなり得ます。
悪い影響
先ほど紹介したとおり、卒FIT後の買取には再生可能エネルギー発電促進賦課金が充てられないため、卒FIT以降はそれまでより買取価格が下がってしまうということです。
卒FIT後は余剰電力をどうする?おすすめの方法をメリット・デメリットで比較
卒FITを迎えても、太陽光発電の設備に問題がなければ、これまで同様に発電が可能です。卒FIT後に余剰電力を活用するために、主に3つの方法があります。
ここでは、それぞれのメリット・デメリットも併せて確認しておきましょう。
FIP制度を活用する
FIP制度(Feed-in Premium(フィードインプレミアム))とは、2022年4月に始まった余剰電力の買取制度です。
余剰電力の買取基準価格にプレミアム(補助金)が上乗せされる制度で、プレミアムが1カ月ごとに見直されるため、買取価格が毎月変動します。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート
プレミアムは直近の市場価格と連動するため、需給を見ながら効果的な戦略を立てやすい点がメリットです。
一方で、買取価格が1か月ごとに変動することから、買取価格が固定されているFIT制度と比較すると、中長期的な収益の予想は立てづらいと言わざるをえません。
売電する電力会社を切り替える
FITの買取価格は、電力会社によって異なります。電力会社による一般住宅の余剰電力買取では卒FIT者向けのプラン提供も多く見られるため、法人でも同様の流れになるでしょう。
さらに一般住宅向けの買取価格では、地域の大手電力会社より、2016年4月の電力全面自由化を受けて参入した「新電力」と呼ばれる電力小売業者のほうが高値傾向が見られます。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 電力の小売全面自由化って何?
卒FITを機に売電先の電力会社やプランの見直しで、同じ会社へ売電を続けるよりも売電収入を上げられるかもしれません。しかし、地域によって加入できる電力会社や買取価格の相場は異なるうえ、新電力も続々と参入する今、自社に合う売電先を探すのに手間と労力がかかります。
蓄電池を導入し自家消費をする
電気料金が高騰する今おすすめしたいのは、余剰電力の自家消費です。太陽電池モジュールに加えて蓄電池を導入すれば、日中に貯めた電気を夜間や発電量の少ない時間帯に使用できるようになり、光熱費の削減につながります。
また、蓄電池に貯めた電気は停電時にも使用可能です。地震や水害の多い日本で、万が一の備えにもなる蓄電池は、企業にとって心強い存在となるでしょう。
蓄電池の導入に高額な費用がかかる点はデメリットですが、補助金などが活用できるケースもあります。自社に活用できそうなものがあれば、活用するのも手です。
【補助金例】
- 民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
- 需要家主導型太陽光発電・再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業
余剰電力を自家消費し成功した事例3選
最後に、環境省が発表する資料のなかから、余剰電力の自家消費に成功した事例を3つ厳選して紹介します。
株式会社藤田エンジニアリング 本社
同社本社家屋へ自家消費型太陽光発電設備とリチウム蓄電池を導入し、日没後の余剰電力活用を成功させた事例です。すでにFIT制度を活用していましたが、まだ太陽電池モジュールが設置されていない空きスペースを有効活用することを目的としています。
営業日は太陽光発電によって使用電力を再生可能エネルギーに置き換えることで二酸化炭素の削減に寄与し、休日の余剰電力は蓄電池に充電、日没後に活用しています。電気の自家消費で電気代を削減できただけでなく、蓄電池導入により停電時の電力確保が可能になり、安心感を得たそうです。
ESIソーラー合同会社 若月牧場
蓄電池の導入によって太陽光発電で得た電気の使用率を95%にまで高めた事例です。同社所有の牛舎・若月牧場の屋根で発電した電気を自家消費することで、電気代の削減とCO2 の排出削減、遮熱対策の3つの課題解消を目指しました。
太陽電池モジュールの設置が牛舎の屋根ということもあり、電気の自家消費による電気代の削減だけでなく、夏場の牛舎内の遮熱対策も期待されています。牛舎内の温度上昇を抑えられれば、乳牛の搾乳量増加による営農収益の改善も見込めます。
株式会社山王 東北事業部
余剰電力を自家消費するだけでなく、BCP対策にも活用する事例です。電子部品の貴金属表面処理メーカーである同社の加工施設に太陽光発電設備と蓄電池を導入し、太陽光発電の自家消費率 約97%を達成しています。
電気のほぼ全量を自家消費するだけでなく、停電時のBCP対策として活用するために同社が選択したのが蓄電池でした。CEV補助金を利用し、EV車のバッテリーを最大限に利用することで停電時のBCP対策としています。
・法人向け/ソーラーカーポートを導入するメリット・デメリット
・ソーラーシェアリングのメリット・デメリットは?成功事例も紹介
・【事例も紹介】工場の太陽光発電導入メリット・デメリット完全ガイド
まとめ
卒FITとは、FIT制度の適用期間が終了することを指す用語です。産業用太陽光発電では、2032年から順次卒FITを迎える企業が出てきます。これから導入する場合は、卒FIT後も含めた検討が必要でしょう。
電気料金が高騰する今注目されるのは、余剰電力の自家消費です。蓄電池も導入すれば、夜間や停電時にも太陽光発電で得た電気が使えます。
卒FIT後の対応も含めた太陽光発電の導入計画のご提案は、日本生まれの太陽電池モジュールメーカー、リープトンエナジーにおまかせください。
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