太陽光パネルはリサイクルが義務化される?政府の今後の動向も解説
2024年9月、政府は太陽電池モジュール(太陽光パネル)のリサイクルを義務化する方針を決めました。
現在太陽光発電の導入を検討している企業の担当者のなかには、上記の方針決定によって今後どのような変化が起こるのかと心配している方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、太陽電池モジュールのリサイクルの義務化を巡る現状から今後予想されうる動向、注意点まで詳しく解説します。太陽光発電の導入を検討される際にお役立てください。
また、太陽光発電のそもそもの仕組みやメリット、費用相場について知りたい方は下記記事も参考にしてみてください。
・法人(企業)向けに解説/太陽光発電のメリット・デメリットは?
・【図解とイラスト付き】太陽光発電の仕組みや役割は?設置の種類も解説
・【産業用/家庭用】太陽光発電の設置費用相場は?内訳、費用削減方法も解説
目次
太陽電池モジュール(太陽光パネル)のリサイクルは義務化される?
まずは、太陽電池モジュールのリサイクルに関する現状を確認しておきましょう。政府・業界団体・メーカーそれぞれの取り組みを交えながら解説します。
政府はリサイクル義務化に向けた法案を検討
2024年9月、政府は太陽電池モジュールのリサイクル義務化に向けて新たな委員会を設置し、実効性のある適切な制度の創出を目指して検討を開始しました。
実はすでに2024年8月には、「第五次循環型社会形成推進基本計画」にて「義務的リサイクル制度の活用」の検討が表明されていました。
これを受けて、環境省では「太陽光発電設備リサイクル制度小委員会」が、経済産業省資源エネルギー庁では「太陽光発電設備リサイクルワーキンググループ」が新たに設置されました。その第1回合同会議にて改めてリサイクル義務化に向けた方向性が示されたものです。
参考:環境省 循環型社会形成推進基本計画 ~循環経済を国家戦略に~
参考:経済産業省/環境省 太陽光発電設備の廃棄・リサイクルをめぐる状況及び論点について
現時点では法的にリサイクルを行う義務はない
現代はさまざまな製品のリサイクル対策に注目が集まっており、太陽電池モジュールのリサイクルについても、当然法的な定めがあるものと思い込んでいる方も多いかもしれません。
しかし、現行法では太陽電池モジュールのリサイクルを行う義務はないのが実情です。現在は、廃棄物処理法に則って適正に処理されることになっています。
業界団体、メーカー側での取り組みも始まっている
リサイクルについての法的な定めはないものの、供給側ではすでにリサイクル対策につながる仕組みづくりが進められています。
例えば、太陽光発電協会(JPEA)は「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」を策定し、含有物質情報を公表するよう太陽電池モジュールメーカーなどに要求しています。
含有物質情報とは、太陽電池モジュールを廃棄する際に環境への負荷が懸念されている「鉛」「カドミウム」「ヒ素」「セレン」の4つの化学物質の含有率などのことを指します。
また、メーカー側においても、ホームページなどを通して積極的に含有物質情報を含む情報提供を行う動きが見られるようになりました。
当社でも、上記ガイドラインに沿った情報提供を行っておりますので、ぜひご確認ください。
リサイクル義務化の実施が検討される理由
太陽光発電は耐用年数を過ぎると稼働できなくなり、廃棄に至ります。日本では2012年7月に、FIT制度(固定価格買取制度)が導入されたことをきっかけに太陽光発電が広まりました。
耐用年数は20〜30年と長いため、実際に大量破棄がピークを迎えると考えられるのは2030年代です。
引用:環境省 再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について
2030年代後半には17万t/年もの使用済み太陽電池モジュールが廃棄されるとの予測もあります。つまり、廃棄物処理における環境負荷を回避するためには、早急な法整備が求められるということです。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー
環境省 太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)
実施時期は?政府が進めるリサイクル義務化の今後の動向
冒頭でも触れましたが、経済産業省と環境省は2024年9月にそれぞれ独自の検討委員会・グループを立ち上げていましたが、10月に入ると合同で新たな有識者会議を設置しました。
この会議で2024年を目途に具体的な支援策がまとめられ、2025年の通常国会にて関連法案が提出される見込みです。有識者会議では、主に以下の3つの論点について検討することが提案されています。
- 「モノ」に関する論点
- 「費用」に関する論点
- 「情報」に関する論点
「モノ(太陽電池モジュール)」を適切に処理できるようにするために、必要な「費用」や「情報」を割り出したうえで今後の詳細な枠組みが構築されていく予定です。
参考:経済産業省/環境省 太陽光発電設備の廃棄・リサイクル制度の論点について
太陽電池モジュール(太陽光パネル)のリサイクルに向けた注意点
これから太陽光発電を活用していくうえでは、太陽電池モジュールのリサイクルを念頭に置いた導入や運用が求められるようになります。では、具体的にはどのようなことを意識しておけばよいのでしょうか。
ここでは、太陽電池モジュールの円滑なリサイクル実現に向けて3つの注意点を紹介します。
環境省によるガイドラインを遵守する
環境省では、太陽電池モジュールの円滑なリユース・リサイクル促進に向けて、ガイドラインを用意しています。
2024年8月には、平成30年に策定された「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」を見直し、第三版となるガイドラインを公開し、「太陽電池モジュールのリユース・リサイクル・埋立処分の全体像」を示しました。
引用:環境省 太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)
第二版からの主な変更点は、以下のとおりです。
- 太陽光発電設備の使用停止に伴う届出対象の追加
- 太陽電池モジュールメーカーに対する含有物質情報の提供要求
今後、太陽電池モジュールを導入・運用する際には、上記ガイドラインの遵守が求められます。
リサイクルにかかる費用を積み立てておく
太陽電池モジュールのリサイクルには、相応のコストがかかります。
もともとFIT制度では、発電事業者によって売電収入の一部を積み立てておくことが期待されていましたが、実際に積み立てを実施していた発電事業者は少ないという実態がありました。
そこで2022年7月から始まったのが、「廃棄費用積立制度」です。この制度では、FIT制度を利用する10kW以上の太陽光発電設備を所有するすべての発電事業者が対象で、売電収入から廃棄にかかる費用が差し引かれ、積み立てられます。
ただし、制度の開始は2022年7月であるものの、実際に積み立てが開始するのは「FITの調達期間が終わる日の10年前から」となります。
この廃棄費用積立制度を適切に活用し、将来の廃棄・リサイクルにかかるコストに備えることが重要です。
参考:経済産業省資源エネルギー庁 廃棄等費用積立ガイドライン
・太陽電池モジュール(太陽光パネル)の寿命は?廃棄方法や費用も解説
適切な処理業者を選定する
太陽電池モジュールを処理するうえでネックとなるのは、有害物質が含まれている点です。有害物質それぞれに適切な処理方法があり、誤った処理が行われてしまうと有害物質が流出・拡散してしまう恐れがあります。
リサイクルの義務化が検討段階にある現在、残念ながらすべての太陽電池モジュール処理業者が正しい処理の知識やスキルを持っているとは言い難いのが事実です。
そのため、太陽電池モジュールのリサイクルを依頼する際には、処理業者の資格や実績をしっかりと確認し、不適切な処理や不法投棄のリスクを避ける必要があります。
太陽電池モジュール(太陽光パネル)のリサイクルに関するよくある質問
最後に、太陽電池モジュールのリサイクルに関してよく聞かれる疑問を解消しておきましょう。
有害物質が含まれるのでリサイクルできないのは本当?
太陽電池モジュールは「リサイクルできる」製品です。
しかし、太陽電池モジュールには有害物質が含まれている可能性があるため、正しい処理方法を知らない、もしくはそのスキルを持っていない業者に依頼した場合には、「リサイクルはできない」と返答されるケースがあるようです。
太陽電池モジュールのリサイクル技術自体は存在していることを理解したうえで、適切な処理業者を選定するようにしましょう。
まとめ
現在、政府主導のもとで太陽電池モジュールのリサイクル義務化が進められています。そのため、これから太陽光発電の導入を考えている場合には、リサイクルを念頭においた検討が求められるでしょう。
太陽電池モジュールメーカーに於いては、太陽光発電協会(JPEA)のガイドラインに沿って、積極的に勧誘物質情報を含む情報提供を行う動きが見られるようになりました。
当社でも、上記ガイドラインに沿って、含有物質情報を含む適切な情報提供を行っております。
当社では、「Tier1」や「PVEL」といった世界的第三者認証機関に認められた高品質な自社工場製造の太陽電池モジュールをご提供しておりますので、これから太陽光発電の導入を検討される際にはぜひ一度ご相談ください。